Again〜今夜、暗闇の底からお前を攫う〜
「あなたは出来が悪いんだから、人より倍も勉強しないとあの成績を維持できないでしょ」


それはいったい誰と比べて『出来が悪い』の?


「あなたは、あの子とは違うんだから」



――『あの子』

私を強く縛るその言葉。


「……お腹空いてないからご飯はいらない、勉強してくるね」


菜穂との楽しかったあの時間から、一瞬にして現実に戻される。

いつになったら、母は“私”を見てくれるのだろうか。

私は自分の部屋に入ると、力なくその場にしゃがみ込んだ。

弱音を吐きそうになるのをのみ込む。

大丈夫、まだ頑張れる。


「勉強しよう」


カバンから教科書を取り出して、この気持ちから逃げるように勉強に向かうが、その日はなぜか身が入らず、何度も似たような問題で間違えたりと無駄な時間を過ごしてしまった。

それもこれも、あのバイクに乗った不良を見て、お姉ちゃんが出ていった日のことを思い出してしまったからだ。
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