Again〜今夜、暗闇の底からお前を攫う〜
携帯を持ってきてないから菜穂には連絡出来ない。

カバンも置いてきたから教科書も無いし、明日からの学校はどうしよう。

財布も無いから何も買えない。

でも家には帰りたくない。

その時、ふと奈都の顔が頭によぎる。

私は気付くと、奈都の家の前まで来ていた。

家庭教師を自分の都合で辞めた分際で、居候させて欲しいなんてあまりにも勝手が過ぎる。

でも頼れる人も家を知っている人も奈都しかいなかった。

あの男に笑われるんだろうな。

無一文で家出をする馬鹿どこにいるんだって。

綺月は笑われる覚悟でインターホンを押した。

すぐに扉は開いた。


「……は?」


カオルがこんなにも驚いた顔を見るのは初めてだった。


「掃除も洗濯も何でもやるから、暫く泊めて下さい、お願いします」


私は頭を下げる。
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