Again〜今夜、暗闇の底からお前を攫う〜
「綺月!」


でもそれは出来なかった。

お姉ちゃんの声が私を引き止めた。


「待って綺月、私は綺月と話がしたい」


お姉ちゃんは一歩一歩私に近寄っているのか、震える声や息づかいさえも耳にしっかりと届く。

だけど私は背を向けたまま振り向こうとはしない。


「あの日、家を出て行って本当にごめんなさい」


お姉ちゃんは私を置いて家を出たこと、二年間もの間姿を見せなかったことにずっと負い目を感じているのか、声からでも申し訳なさが滲み出ていた。


「何度も綺月に会いに行こうと思ったの。
でも、綺月の立場になって考えた時自分だったら腹が立つなって思った。
綺月に嫌われるのが怖くてずっと逃げてた」


みんなが息を呑み見守る中、私はずっと堪えていた。
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