Again〜今夜、暗闇の底からお前を攫う〜
「馬鹿だなぁ、そんなので離れたりしないよ」

「…本当?」

「本当だよ」


私は涙でグシャグシャになった菜穂の顔を見て笑いながら、子供をあやす親のように抱き締めた。


「あーもう、泣かないで」

「泣いてない〜」

「めちゃくちゃ泣いてるじゃん」


私は菜穂の涙を袖で拭いてあげる。

実際私も菜穂に家のことを黙っていたのだからお互い様だ。

菜穂はもう既に誰かから私の家族の話を聞いていて、私の存在を確かめているかのように強く手を握った。

菜穂が泣き止むまで私は手を握り返し、空が暗くなるまでそばに居た。
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