Again〜今夜、暗闇の底からお前を攫う〜
「カオル?そこで何してるの」

「…んー、いや、すげぇ綺麗な女がいたんだよ、逃げられたけど」

「カオルがナンパなんて珍しいね」

「ナンパじゃねーよ、ただ気になっただけ。お前と同じ制服着てたし」

「同じ学校でカオルのタイプの子なんていたかなぁ」

「カオルー!菜穂!早く来いよ!」

「カオル、呼んでるよ、早く行こう」

「…おう」


彼らが、こんなやりとりをしているとは知らずに……。



不良なんかと関わっても私にとっては害になるだけだ。

"私はお姉ちゃんみたいにはならない"

その言葉がまるで呪いのように、しがみついて消えない。

それがどんどん自分にとって重しになっていることに、私は気付かないふりをしていた。
家に帰っても明かりは点いていない、玄関には靴は無いし、テーブルにあるのは冷たくなったご飯に、異様に大きく聞こえる時計の秒針の音。

いつものことだ。


「……勉強、しよう」


私は冷たくなったご飯も食べずに、自分の部屋に閉じこもり勉強を始める。

私にはもう勉強しかないから。

そう自分に言い聞かせながら――。
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