Again〜今夜、暗闇の底からお前を攫う〜
その日、家に帰ると早々に奈都に夏休みの話をするが、意外にも奈都は首を左右に振り乗ってこなかった。


「私絶対綺月ちゃんと同じ高校に受かりたいもん。みんなも塾に行って勉強してるんだし、私も毎日休まず勉強する」


塾に行ってない奈都にとって、夏休みは勉強に大きく差がついてしまう期間だと悟っていた。


「綺月ちゃんも夏休みは毎日勉強してたんでしょ?だったら私もやる」


勉強をすればするほど結果が良い方向に進むとは限らない。

自分が良い例だ、と私は心の中で自分を嘲笑った。


「私が思う奈都の好きなところは、いつも全力で楽しんでるところなんだよね」


毎日鼻歌を歌いながら料理を作ったり、ベランダで洗濯物を干しながら空の雲を指でなぞってみたり、掃除をし終わったあと絶対に綺麗になった床で寝そべったり、お日様の香りに釣られ畳んだ洗濯物の上で寝てしまって笑いながらまた畳直したりと、奈都はいつも楽しそうにしていた。

それを見るのが私は好きだった。

勉強をするのが悪いことではない。

ただ、私は勉強だけの夏休みに息苦しさを感じて欲しくない。
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