Again〜今夜、暗闇の底からお前を攫う〜
「一條(いちじょう)、この問題を解いてくれ」
「はい」
私は黒板に問題の答えをスラスラと書いていく。
「正解だ、さすがだな」
「当然です」
教師の拍手を合図に、クラスメイトも私に拍手を送る。
その拍手喝采の中、当然のような顔でニコリと微笑んだ。
私は高校2年生になり、お姉ちゃんが歩んできたレールの上を寄り道せずに歩いている。
お姉ちゃんが家を出て行ってから、どうしているのかはなんとなくだけど風の便りで聞いた。
ガラの悪い男達と一緒に歩いていたとか、有名な暴走族のメンバーになったとか、夜に飲食店でのバイトをしているとか、もう色々な嘘か誠か分わからない噂をたくさん耳にした。
学校のお姉ちゃんは生徒会長を務めるほど優等生で、人望も厚く、家では妹思いで両親の前でもお利口さんだった。
そんなお姉ちゃんがおかしくなって家を出たのは、“アイツ”らと関わったからだ。
本当のことはわからない。
でも、私はそうだと思っている。
お姉ちゃんが家を出て行ったのはアイツらのせいだ。
「さすが首席合格は違うね~」
席に戻ると、前の席に座っている武田菜穂(たけだなほ)が話しかけてくる。
菜穂は、友達の少ない私にとって唯一の友達と言える人。