Again〜今夜、暗闇の底からお前を攫う〜
「ちょっと痛いから!離してよ!」

「うるせぇな、静かにしろ!」


男の力ってこんなにも強いのかと、どんなにジタバタしても離れない手に恐怖を感じた。

どうしよう、ここから叫んだら菜穂達に届くだろうか。

私は赤くなる腕を見ながら、この状況に恐怖と戸惑いが頭を支配していた。


「おい、どこ行くんだよ、綺月」


その時、後ろから声がして、彼らが動きを止める。

私が振り返ると同時に、カオルの長い足が私の腕を握っている男に向けられる。


「え?」


私が間抜けな声を漏らした瞬間、男はだらしなく倒れていた。

さっきまで力では勝てなかった男が、咳き込みながら腹を押さえ痛がっている。
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