Again〜今夜、暗闇の底からお前を攫う〜
みんながいるのに雪希は行かないの?

雪希は気にならないの?

カオルのことが心配じゃないの?

カオルが窓ガラスを割って血を流した日も、雪希だけは事情を聞きにくることは無かった。


「私はもう逃げない、雪希も向き合うべきだよ」


もしかしたら、カオルと何かあったのかもしれない。

ただ壊れているカオルを見るのが怖いだけなのかもしれない。

それでも、カオルとずっといて仲良くしているなら、雪希の声もカオルに届くはずだ。


「行こう、雪希」


今度は私が雪希の手を握って強く引っ張った。

この角を曲がればカオルがいる。

どんな顔をして、なんて伝えよう。

頭の中では何も整理出来てはいなかったけど、身体がカオルのことを欲していた。
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