Again〜今夜、暗闇の底からお前を攫う〜
私と雪希が角を曲がると、悲惨な光景が私の目に飛び込んでくる。

菜穂が立ち尽くしたように立っていて、幸人と海斗はカオルを止めようとして、それが出来なかったのか地べたに尻もちをついてカオルを見下ろしていた。

そしてカオルの周りには十人ほど人が痛がりながら倒れていて、その真ん中でカオルは立っていた。

もうほぼほぼ気絶している男の胸ぐらを掴んで、色の無い死んだ目でカオルは拳を振り上げていた。

時が経てば、カオルはいつか解放されるはずだ。

きっと来年にはとそれを繰り返し、放置した結果が今のカオルだった。

時が経つにつれ、カオルはもっと深く深く真っ暗な海底へと落ちていった。

怖かった。

こんなの私が知っているカオルではない。

私はあの時みたいにまた一歩後退る。

ダメだ、逃げちゃダメなんだ。

でもなんて声をかけたらいいの?こんな状態のカオルに私の言葉は届くの?

その時、雪希が言った言葉を思い出して、私は今出せる声量で叫んだ。
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