Again〜今夜、暗闇の底からお前を攫う〜

「でも三日も目覚まさないって心配だよね」

「叩き起こせば起きるだろ」

「病人を叩き起そうとするんじゃないよ！」

「おーおーツッコミがキレキレだな！菜穂！」


カオルがひとまず戻ってきたことで、ピリついた空気が嘘のように軽くなった。

みんなが笑い合っている光景を見て、自然と私も笑みがこぼれる。


「あのさ、雪希」


私は空いている席に座りながら雪希に声をかける。


「なに？」

「カオルの名前を呼ぶだけでいいって言ったのはどうして？」


ずっと雪希のその言葉が気になっていた。

正直あの時はカオルの名前を呼ぶことしか自分には出来なかったし、私の方を見てくれたのは奇跡的だったと思う。

カオルをとりあえず押さえられたのだから良かったけど、それだけでいいという雪希の謎の自信にずっと引っかかっていた。


「あんな風に自我を失ったカオルには誰の声も聞こえないんだよ」

「…そんなことはないと思うけど」

「実際、ユキとカイがカオルを止めようとしていたし、菜穂だってカオルの名前を何度も呼んだけど、一度だって俺達の方は見なかった」