Again〜今夜、暗闇の底からお前を攫う〜
家族のことを第一で考えている綺月が死にたいと口にした時、ふざけんなと思った。

思ったら気付くと口に出していた。

お前は生きるべきだ、生きて幸せになれ。

俺なんかと綺月を決して一緒にしてはいけなかった。

綺月と俺では見ている世界も、生きる場所も違う。

それでも顔を見る度に、話す度に、触れる度に綺月が欲しくなった。

これ以上惹かれたくないと思えば思うほど、抱き締めて、キスして、めちゃくちゃにしてやりたかった。

他の女を抱いても、綺月と話してる時の方がよっぽど幸福感があった。

綺月の代わりは、他の女ではうめられない。

そう気付いた時、泣きたくなった。

欲しくて手を伸ばしても、その手に僅かでも触れた時すぐに離してしまう。

だけど、手離したくない。

大事なものが出来ることが死ぬよりも怖かった俺は、心と身体が徐々に結びつかなくなっているのに気付いた。

綺月が自分に触れたら、もう止められない気がした。

綺月に死なないでと言われたら、死にたくなくなる気がした。

違う、気がしたとかじゃない。

俺はずっと綺月にそう言って欲しかったんだ。
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