Again〜今夜、暗闇の底からお前を攫う〜
「痛ぇ!」


思わず唇から離れると、綺月はその隙にすぐに距離を取る。


「カオルが、変なことするからでしょ!」


顔を赤らめながら綺月はなぜか戦闘態勢でかまえていた。


「全部あげるって言ったじゃねぇかよ」

「すぐにあげるっては言ってないじゃん、そもそも何も言わずに、キ、キスする!?普通!?
もっと順序ってものがあるじゃん!」


動揺しているのか声が大きくなる綺月に一歩また一歩と近付く。

早く触れたくて、一秒も離れたくはなかった。


「待て、止まれ」

「順序守ればいいのか?」

「…え?」


俺はあっという間に綺月との距離を詰めると、今度は自分から抱き締める。

さっきよりもずっと強く深く。


「…カオル?」

「綺月がそばにいてくれるなら、生きたい」


自分がやってきたことも、両親への罪悪感も、奈都に対する申し訳なさも消えない。

この先、また死にたいと思うかもしれない。

それでも、綺月がそばにいてくれる今なら生きたいと思える。
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