Again〜今夜、暗闇の底からお前を攫う〜
「なに食べる?」

「んー、菜穂は?」

「私はこのハンバーグと、あとドリアと、このサラダと、このパフェ!あっドリンクバーも付つけよ!」

「そんなに?!夕飯あるんでしょ!?」

「私の胃袋は、これぐらい余裕でペロリさ!」


本当に菜穂は食事の時だけバカみたいに元気になるなぁ……。

この元気を勉強の時も維持してくれればいいのに……。

いや、勉強で元気になるなんてありえないか。


「じゃあ私はこれで」

「よし!頼もう!」


菜穂はスラスラと私の分まで注文すると、さっそくドリンクを取りに行ってくれた。

注文したメニューが来るのを待ちながら、私はファミレスの窓から見える塾になんとなく目を向ける。

小学校の頃から評判の良い塾を聞くと、母は有無を言わせずにその塾に通わせ、成績の善し悪しで今後通うかどうか見ていた。

もちろん、学校だけではなく塾でも常に成績トップでいなさいと言われ続けた。

だけど、それはかなりの難題だった。

多くの名門学校に合格している塾には大概頭の良い生徒ばかりが集まっていて、そこでトップになることは私にとっては空を飛べと言われるぐらい難しいことだった。

だけど、お姉ちゃんはそこでもトップで居続けた。

ようするに、お姉ちゃんは母の理想そのものだったのだに成長してくれたのだ。

でも、お姉ちゃんはもういない。
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