Again〜今夜、暗闇の底からお前を攫う〜
「菜穂、カイのバイク壊れてないか見てきて」

「分かった」


ユキに言われ私はカイのバイクが無事かを確認する。


「あと、せっき悪いけど…」

「分かってる、一喜さん呼んでくる」


何度も見慣れている二人のケンカに、ユキは迅速に対応していく。

そしてついにカイの方から手が出る。

振り上げられた拳はカオルの頬目掛けて猛スピードで落ちるが、それをカオルは軽く交わすと今度はカオルが足でカイに蹴りを入れる。

急所は外れたけど、カイの服が足の裏に付いた泥で汚れる。

それを見て舌打ちをすると、指の関節を鳴らしながらカオルに近づいて行く。


「まずいね」


負けず嫌いのカイには言えないが、カオルはカイよりも遥かにケンカが強い。

今までカイが挑んでカオルに勝った試しが無い。

それでもカイはカオルに挑み、カオル自身もケンカで手を抜いたりしないからカイがぶっ倒れるまで、もしくは誰かが止めに入るまで収まりはしない。

ケンカの修復をするのは毎度ユキの役割で、それがいつもクソほどに面倒臭いと以前ぼやいていた。
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