お見合い仮面夫婦の初夜事情~エリート裁判官は新妻への一途な愛を貫きたい~
いつもより回された腕の力が強く、歩調も速い。
なにか言わなくては、と思うのに声も言葉も出ない。大知さん、きっと怒っている。
そのとき不意に大知さんと目が合い、心臓が跳ね上がる。
「大丈夫か?」
その表情が私のよく知るいつもの大知さんのもので、張りつめていたなにかが切れる。一瞬で視界がぼやけ、とっさにうつむいた。
「どうした? なにかされたのか?」
大知さんが心配そうに私の真正面に立って様子をうかがってくる。とめどなく涙があふれるのを、喉の奥にぎゅっと力を入れ、小さく首を横に振った。
安心してホッとしたのと同時に足がすくむ。掴まれていた腕をさすって、気持ちを落ち着かせようとするものの心は乱れていくばかりだ。
様々な感情が一緒くたになって混ざり合い、自分でもうまく説明できない。
その一方で、冷静な自分が必死に語りかけてくる。
子どもじゃないんだから、あれくらい自分で対処できなくて、どうするの。大知さんに迷惑をかけて、さらには泣きだして……。
これ以上、忙しい彼をわずらわせ、心配をかけるわけにはいかない。さっさと泣きやんで、平気だって笑って謝らないと。
わかっているのに嗚咽が止まらず、胸が苦しい。すると大知さんは私を優しく抱きしめた。
「駆けつけるのが遅くなって悪かった。もうなにも心配しなくていい。大丈夫だ」
穏やかで落ち着かせる彼の声が耳に届く。おかげで複雑に重なり合った心の奥底で、ずっと言えなかった本音がこのタイミングで口をついて出る。
なにか言わなくては、と思うのに声も言葉も出ない。大知さん、きっと怒っている。
そのとき不意に大知さんと目が合い、心臓が跳ね上がる。
「大丈夫か?」
その表情が私のよく知るいつもの大知さんのもので、張りつめていたなにかが切れる。一瞬で視界がぼやけ、とっさにうつむいた。
「どうした? なにかされたのか?」
大知さんが心配そうに私の真正面に立って様子をうかがってくる。とめどなく涙があふれるのを、喉の奥にぎゅっと力を入れ、小さく首を横に振った。
安心してホッとしたのと同時に足がすくむ。掴まれていた腕をさすって、気持ちを落ち着かせようとするものの心は乱れていくばかりだ。
様々な感情が一緒くたになって混ざり合い、自分でもうまく説明できない。
その一方で、冷静な自分が必死に語りかけてくる。
子どもじゃないんだから、あれくらい自分で対処できなくて、どうするの。大知さんに迷惑をかけて、さらには泣きだして……。
これ以上、忙しい彼をわずらわせ、心配をかけるわけにはいかない。さっさと泣きやんで、平気だって笑って謝らないと。
わかっているのに嗚咽が止まらず、胸が苦しい。すると大知さんは私を優しく抱きしめた。
「駆けつけるのが遅くなって悪かった。もうなにも心配しなくていい。大丈夫だ」
穏やかで落ち着かせる彼の声が耳に届く。おかげで複雑に重なり合った心の奥底で、ずっと言えなかった本音がこのタイミングで口をついて出る。