お見合い仮面夫婦の初夜事情~エリート裁判官は新妻への一途な愛を貫きたい~
『ちょっとこっちに来てください』
大知さんは言われるがまま席を立ち、私の後に続いた。向かうのは私の自室だ。
『千紗、ここは』
『大知さん』
部屋の前まで来てなにか言いたげな大知さんの言葉を遮り、彼としっかり目を合わす。
『恋に落ちる準備はいいですか?』
真剣な私の問いかけに大知さんは目を丸くする。実は彼のそんな表情を見るのは初めてで、驚きつつ自室のドアをそっと開けた。
急いで隙間から顔を覗かせたのは、拾ったばかりの小さな仔猫だ。手のひらサイズの二匹を抱き上げ、改めて大知さんに向き直る。
『どうですか、この天使のようなかわいさ! ひと目惚れしちゃって……私の恋人です』
笑顔で彼に訴えかけたが、大知さんは狐につままれたような顔をしていた。そこで急に冷静になり、自分の行動が恥ずかしくなる。
『あの、大知さん、どこか元気がないような気がして。それでこの子たちを見たら少しでも癒やされるかな、って』
たどたどしく言い訳し二匹の説明をする一方、内心で自分を責め立てる。彼みたいな大人相手になにをしているんだろう。私は二匹の存在に元気をもらえるが、大知さんも同じとは限らない。それどころか……。
『あ、もしかして猫、お嫌いでしたか? アレルギーとかは?』
そういった前提さえすっ飛ばしていた。しかし彼はそこでやわらかく微笑む。
『いや……ありがとう。十分に癒やされた』
頭に手をのせられ、初めての大知さんとの接触に、体温は一気に上昇する。本心かどうかはともかく、彼が私に合わせてくれているのは伝わった。
大知さんは言われるがまま席を立ち、私の後に続いた。向かうのは私の自室だ。
『千紗、ここは』
『大知さん』
部屋の前まで来てなにか言いたげな大知さんの言葉を遮り、彼としっかり目を合わす。
『恋に落ちる準備はいいですか?』
真剣な私の問いかけに大知さんは目を丸くする。実は彼のそんな表情を見るのは初めてで、驚きつつ自室のドアをそっと開けた。
急いで隙間から顔を覗かせたのは、拾ったばかりの小さな仔猫だ。手のひらサイズの二匹を抱き上げ、改めて大知さんに向き直る。
『どうですか、この天使のようなかわいさ! ひと目惚れしちゃって……私の恋人です』
笑顔で彼に訴えかけたが、大知さんは狐につままれたような顔をしていた。そこで急に冷静になり、自分の行動が恥ずかしくなる。
『あの、大知さん、どこか元気がないような気がして。それでこの子たちを見たら少しでも癒やされるかな、って』
たどたどしく言い訳し二匹の説明をする一方、内心で自分を責め立てる。彼みたいな大人相手になにをしているんだろう。私は二匹の存在に元気をもらえるが、大知さんも同じとは限らない。それどころか……。
『あ、もしかして猫、お嫌いでしたか? アレルギーとかは?』
そういった前提さえすっ飛ばしていた。しかし彼はそこでやわらかく微笑む。
『いや……ありがとう。十分に癒やされた』
頭に手をのせられ、初めての大知さんとの接触に、体温は一気に上昇する。本心かどうかはともかく、彼が私に合わせてくれているのは伝わった。