お見合い仮面夫婦の初夜事情～エリート裁判官は新妻への一途な愛を貫きたい～

　私、やっぱり大知さんが大好き。

　大知さんはそっと唇を動かし、私の下唇を優しく食む。続けて上唇を軽く吸われ、音を立てて口づけられる。

　そうやって少しずつ私の中にある欲望を引き出すようなキスに、溺れそうだ。

　苦しくて唇の力を緩めて彼を受け入れる姿勢を見せると、そのタイミングを見計らっていたかのように大知さんの舌が差し込まれてキスはより深いものになる。

「ふっ……んん」

　ぬるりとした独特の厚い舌の感触は、彼とこんな口づけを交わすまで知らなかった。

　ぎこちなく自分の舌を差し出すと、あっという間にからめとられ蹂躙されていく。

　混ざり合う唾液が水音を立て、直接脳に響いて羞恥心を増幅させる。いつの間にか頬に手を添えられ、大知さんにされるがままだった。

　もう片方の手は腰に回され、より彼に密着した状態で口づけは続けられる。

　ゆっくり唇が離れ解放されたとき、とっさにうつむき、大知さんから視線を逸らした。今になって心臓がバクバクと音を立て、呼吸が乱れる。

　これくらいでいちいち動揺してどうするの。結婚までしている夫婦なのに。

　大知さんにあきれられるわけにはいかない。

　そうしていたら大知さんに強く抱きしめられ、目を瞬かせた。

「千紗」

　彼の低い声が鼓膜を震わせ、反射的に肩をすくめる。

「心配しなくても千紗が嫌がる真似はしない」

　穏やかな口調で続けられ、弾かれたように顔を上げた。