お見合い仮面夫婦の初夜事情~エリート裁判官は新妻への一途な愛を貫きたい~
「このままでいい。もう待てないんだ」

 いつもの冷静で落ち着いた雰囲気の彼からは想像できない。大知さんの瞳は情欲に揺れていて、目が離せない。

 彼はそっと私の頬に触れる。

「今すぐ千紗が欲しい。俺だけか?」

 大知さんの問いかけに、私の中のなにかが弾けた。

「私も……私も、大知さんが欲しいです」

 言い終わるのと同時に唇が重ねられ、貪るようなキスが始まる。

「んっ……んん……」

 口づけを交わしながら大知さんは起用に私のブラウスのボタンをはずしにかかった。

 なんで、こんなに器用なのか。少なくともキスを受け入れるだけの私にはできない技だ。

 気づけばすべてのボタンがはずされ、ブラウスは肩をすべるようにして脱がされた。

 上半身はキャミソールとブラジャーだけになり、空気に肌がさらされ無意識に身震いする。

 それに気づいたのか、大知さんがキスを中断させた。彼と視線が交わり、思わずうつむく。

「きゃあ!」

 けれど大知さんがキャミソールの裾をまくり上げたので、顔を上げ思わず叫んだ。

 さらにはブラジャーにまで手をかけられ、無駄な動きひとつなく、大知さんは私が身につけていたものをすべて剥ぎ取っていく。

 鮮やかすぎる彼の手際のよさに経験の差を思い知った。
 
 それが小さなとげとなり、胸を隠すように肩を縮めて腕を組む。

「わ、私だけ脱ぐのはずるいと思います」

 恥ずかしさも合わさり、つい憎まれ口を叩く。すぐに後悔したがもう遅い。こんなときに艶っぽいなにか気のきいたひと言も言えないなんて。
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