お見合い仮面夫婦の初夜事情~エリート裁判官は新妻への一途な愛を貫きたい~
 やっぱり私は……。

「そうだな」

 沈みそうになっていたところで、すぐに思考が切り替わり、目の前の光景に意識を奪われる。

 大知さんが着ていたシャツを脱ぎ捨て、彼も私と同じように上半身裸になったのだ。

 ほどよく筋肉がついて引きしまった肉体が現れ、とっさに目を逸らそうとする。

「千紗」

 けれど大知さんに名前を呼ばれ、おずおずと彼の方を向いた。

「存分に愛してもいいんだろ?」

 真剣な表情に、息をのむ。

「はい。私、ずっと大知さんが好きでした。だから大知さんに愛されたいです」

 勇気を振り絞って答えると、強く抱きしめられる。触れた肌から直接伝わる感触や温もりは、なんとも言えない安堵感をもたらしていく。

 羞恥心は吹き飛び、大知さんの背中に腕を回した。

「このタイミングでそう言われると抑えが効かなくなる」

「だ、だめでしたか?」

 大知さんの言葉をどう捉えていいのかわからず、うろたえながら尋ねる。

「いや」

 短く答えると、大知さんは首筋にキスをして、唇を耳もとに寄せた。

「千紗が不安や余計なことなんて考えられないほど、俺でいっぱいにするから」

 言うや否や、大知さんは私の耳に舌を這わせ、彼の骨ばった手は肌をすべっていく。

 リビングで中途半端だった熱がよみがえり、彼から与えられる快楽の波に今度はおとなしく身を委ねていく。

 それから宣言通り、ひたすら大知さんに愛され、彼に溺れていった。
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