お見合い仮面夫婦の初夜事情~エリート裁判官は新妻への一途な愛を貫きたい~
※ ※ ※
焼き上がりを知らせる音で我に返り、体を起こしてキッチンに向かおうとする。それとほぼ同時にリビングのドアが開いた。
「ただいま」
「大知さん、おかえりなさい」
私の足はキッチンから彼の方へ向いた。スーツ姿の彼に対し、パジャマなのは少しだけ照れくさい。
「なにか焼いているのか?」
「はい。久しぶりにパウンドケーキを作ってみたんです。一日置いた方がおいしいと思うので、明日よかったら召し上がってください」
お風呂できているのでどうぞ、と声をかけながらキッチンに移動した。ミトンを装着して照明が消えたオーブンの蓋をそっと開ける。
中から高熱の蒸気が流れ出し、慎重にパウンドケーキの型にそっと手を伸ばした。
うん、いい感じ。
綺麗に焼き色がつき、出来栄えに満足する。
焼き縮みを防止するため取り出したパウンドケーキを型ごと、高さ十センチくらいのところからトントンと調理台に落として衝撃を与えた。もう少し粗熱が取れたら型からはずそう。
「千紗」
「わっ」
不意に背後から抱きしめられ、思わず声をあげた。完全に手もとのケーキに意識を集中していたので、大知さんが近づいていたのにまったく気づかなかったのだ。
彼が流し台に空のお弁当箱を置いたので、どうやら持ってきてくれたらしい。
「ありがとうございます。洗っておくので後は」
「お礼を言うのは俺の方だよ。いつもありがとう、奧さん」
穏やかな声色に、胸の奥がじんわり熱くなる。
焼き上がりを知らせる音で我に返り、体を起こしてキッチンに向かおうとする。それとほぼ同時にリビングのドアが開いた。
「ただいま」
「大知さん、おかえりなさい」
私の足はキッチンから彼の方へ向いた。スーツ姿の彼に対し、パジャマなのは少しだけ照れくさい。
「なにか焼いているのか?」
「はい。久しぶりにパウンドケーキを作ってみたんです。一日置いた方がおいしいと思うので、明日よかったら召し上がってください」
お風呂できているのでどうぞ、と声をかけながらキッチンに移動した。ミトンを装着して照明が消えたオーブンの蓋をそっと開ける。
中から高熱の蒸気が流れ出し、慎重にパウンドケーキの型にそっと手を伸ばした。
うん、いい感じ。
綺麗に焼き色がつき、出来栄えに満足する。
焼き縮みを防止するため取り出したパウンドケーキを型ごと、高さ十センチくらいのところからトントンと調理台に落として衝撃を与えた。もう少し粗熱が取れたら型からはずそう。
「千紗」
「わっ」
不意に背後から抱きしめられ、思わず声をあげた。完全に手もとのケーキに意識を集中していたので、大知さんが近づいていたのにまったく気づかなかったのだ。
彼が流し台に空のお弁当箱を置いたので、どうやら持ってきてくれたらしい。
「ありがとうございます。洗っておくので後は」
「お礼を言うのは俺の方だよ。いつもありがとう、奧さん」
穏やかな声色に、胸の奥がじんわり熱くなる。