お見合い仮面夫婦の初夜事情~エリート裁判官は新妻への一途な愛を貫きたい~
 次に瞼、目尻、鼻の頭と慈しむようなキスが降ってきて、私は静かに受け入れた。

 徐々に気持ちが落ち着き、そのタイミングを見計らってか、そっとうしろに倒される。

 ベッドの感触を背中に受け、自分を見下ろす大知さんを見つめた。明かりの落とされた部屋でも大知さんの表情はよく見える。

 曇りのない真っ直ぐで真っ黒な瞳に、吸い込まれそうだ。必要以上に瞬きをしていると唇を重ねられる。

「んっ」

 甘い口づけが再び始まり、その間に大知さんは私のパジャマのボタンに手を掛け、器用にはずしていく。

 さらされた肌が空気に触れ、身震いしそうになるのと同時に、羞恥心で皮膚に熱がこもっていく。寒いのか熱いのか判断できない。

 さらに大知さんの手が、はだけた箇所から滑り込まされ、直接肌を撫でていく。

 驚きで声をあげそうになったが、キスで口を塞がれ声にならない。

「ふっ……ん」

 口づけに応えようと躍起になるも、私に触れる彼の手にも翻弄され、意識が拡散する。結局不器用で経験不足な自分は受け入れるだけだ。

 気がつけば背中に腕を回され、軽く体を浮かされたかと思ったら、あっさり上半分のパジャマが剥ぎ取られた。

 そこで唇が離れ、大知さんが上半身を起こしたので、伝わっていた温もりが消え心細くなる。けれど大知さんは素早く自身のパジャマを脱ぎ捨て、再び私に覆いかぶさってきた。

 力強く抱きしめられ、直に密着した肌から伝わる温もりは先ほどの比ではないほど熱くて心地いい。
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