お見合い仮面夫婦の初夜事情~エリート裁判官は新妻への一途な愛を貫きたい~
「そういえば、さっき万希から連絡があった。千紗に連絡したけど繋がらなかったからって」

「え?」

 カップを机の上に置いたタイミングで彼の口から姉の名前が飛び出し、目を瞬かせる。

「急な話らしく、明日仕事でこちらに寄る用事があるから夕飯でも一緒にどうかって」

「そう、なんですか」

 たしかに仕事もあって明日の用件なら早く都合を聞いておきたいだろう。

 姉と大知さんは元々知り合いだから、ふたりがやりとりし合ってもおかしくはない。ましてや姉は先に私に連絡を取ろうとしてくれていたのなら。

「千紗から返事をするって言っておいた」

「あ、はい。ありがとうございます」

 アラームのときには気づかなかったが、あとでスマホを確認しよう。そこで彼に尋ねる。

「ちなみに大知さんの明日のご都合はいかがですか?」

「遅くはならないと思う」

「なら、うちで一緒に夕飯でかまいませんか?」

 私も仕事だけれど、夜に明日の夕飯の支度しておけば問題なさそうだ。ところが大知さんはやや渋い表情になった。

「無理せず外で食べてもいいんじゃないか?」

「大丈夫ですよ。相手は実の姉ですし」

 大知さんの気遣いに笑みがこぼれる。家でもてなすにしても、そこまで気を張る相手ではない。

 そこで違う考えが浮かび、わずかに迷ったあと、おそるおそる彼に問いかけた。

「……お姉ちゃん、ほかになにか言ってました?」

「いや?」
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