お見合い仮面夫婦の初夜事情～エリート裁判官は新妻への一途な愛を貫きたい～
　不思議そうに首を傾げる大知さんに、とっさに笑ってごまかす。続けて朝食とお弁当の準備に取りかかろうとキッチンに戻った。

　おそらく用件だけだとは思うもののの、姉と大知さんがどんな会話をしたのか気になってしまった。

　なにか話したのかな？　近況くらいはやりとりしたよね？

　けれど大知さんが私に伝えるほどでもないのなら、本当にただ世間話を交わしただけなのかもしれない。少しだけホッとして、次に襲ってくるのは自己嫌悪だ。

　いちいち気にしてどうするんだろう。私ってこんなに嫉妬深い女だったっけ？

　悶々とする気持ちを振り払い、卵焼きを作るため卵焼き機をセットし、ボールに卵を割り入れて菜箸で勢いよくかき混ぜる。

「そういえば法服はクリーニング屋さんに仕上げてもらったのを用意していますから」

　気持ちを切り替えるために私は違う話題を振った。大知さんが法服を持って帰宅していたので、この土日でクリーニングに出しておいたのだ。

　裁判のときに着用する法服は基本的に裁判所に置いているのだが、洗濯やクリーニングのため持ち帰る場合がある。

　それは父も同じだった。問題はケアの方法だ。昔は素材の関係で、家庭で扱うのは難しくクリーニング店にお願いするのが実家では当然だった。

　ただ法服の素材も変化し、今は自宅で洗濯も可能になったらしい。

　だから大知さんの法服も本当は私が洗濯してアイロンをかけてもいいのだけれど、少しでも皺になったらと思うと怖いので、ここはプロにお任せしようとクリーニング店を利用している。
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