お見合い仮面夫婦の初夜事情~エリート裁判官は新妻への一途な愛を貫きたい~
「ふたりとも真面目ねぇ」

 事の成り行きを聞いた萩野先生が感心したように頷いた。続けてその視線は川島先生に向けられる。

「ちなみに逢坂先生のご主人、どんな方だった?」

 好奇心で目を輝かせる萩野先生に川島先生はたじろぐ。

「あ、いえ。ちょうど席をはずしていらっしゃったので、ご挨拶できずじまいで」

「あら残念。本当にお忙しい方なのね」

 そこで話は終了し、各々業務に取りかかった。


 仕事が終わりスマホを確認すると、姉から絵文字交じりでメッセージが届いていた。

【ありがとー。千紗の作ったロールキャベツが食べたい! いつものトマト味のやつ! お土産買っていくね】

 実家でよく披露した得意料理のひとつをリクエストされ、このまま買い物をして帰る。

 大知さんには念のため連絡をしておこう。彼の方が、帰りが遅いかもしれないが。

 普段からよく買い物をするスーパーマーケットに立ち寄る。店内は私と同じく仕事帰りの人で賑わっていた。

 貼り出されているチラシをチェックしつつ、まだ春キャベツが売られていたので手に取り、ひき肉やトマト缶などをかごにいれていく。

 あとはなにを作ろうかな? ジャガイモがあるから、グラタンかオーブン焼きにしようか。サラダも用意しないと。

 家にあるものを思い出しながら献立を決めていく。そのときバッグの中のスマートホンが音を立てた。相手は大知さんで慌てて電話を取る。
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