お見合い仮面夫婦の初夜事情~エリート裁判官は新妻への一途な愛を貫きたい~
「おかえり、千紗。帰ろう」

 握られた手も胸も熱い。「はい」と答えるのが精いっぱいだ。でもつながれた手は離さずに、私たちは自分たちの部屋へ向かった。

 大知さんがある程度下準備をしてくれていたので、夕飯はあっという間に仕上がった。

 豚バラと長ネギの中華風炒めと豆腐と卵のスープをメインに、ブロッコリーのおかか和えとキノコの蒸し煮を副菜とした献立だ。

 ついでに姉から連絡があった旨を告げ、明日のメニューも伝える。

「ロールキャベツを手作りするのか」

 大知さんが驚いた口調で返してくる。そういえば彼と結婚してからは披露していないと気づいた。

「少し手間がかりますけどね。市販のよりおいしいって実家では大好評なんです。大知さんのお口にも合うといいのですが……」

「それは楽しみだな」

 彼の笑顔にやる気がみなぎるのを感じた。

 食後、大知さんにお茶を淹れたあとで張り切って明日の準備に取りかかった。簡単に掃除をして夕飯の支度ついでにお弁当と朝食の用意もする。

 いつもより遅い時間に寝支度を整え寝室に向かうが、姉が来るのが楽しみなのか、もてなすのに気合が入っているのか気持ちは変に高ぶっていた。

 まるで遠足前日の子どもだ。

 寝室のドアをそっと開けると、部屋の明かりは落とされていたが、ベッドサイドランプが灯されベッドの一部を照らしている。

 ベッドボードに背を預けた状態で本を読んでいた大知さんが、こちらに顔を向けた。
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