お見合い仮面夫婦の初夜事情~エリート裁判官は新妻への一途な愛を貫きたい~
 そういった決まりがあるわけではないが、国家公務員の立場として公平中立を掲げる裁判官の職に就いている以上、結婚相手やその家族に反社会的勢力との繋がりがないか、重大犯罪の前科がないかなどを調べる場合が多い。

 たしかに父は大知さんと同じ裁判官で、その娘である私たちの経歴も文句はないだろう。

 とはいえ、大知さんの意思はどうなっているのか。父や母が大知さんを気に入って無理を言って押し進めているのではないか。

 姉はともかく、大知さんにとって私は結婚相手として魅力的に思えるような要素はなにもない、はずだ。姉に比べるとそこまで親しかった記憶もない。

『大知くん、千紗でもいいって』

 フォローのつもりなのか、姉の言い方に少なからずショックを受ける。そうか。条件だけ見て私は二番手……姉の代わりなんだ。

 けれど瞬時に気持ちを切り替え、自分を奮い立たす。大知さんがかまわないなら頑張って彼のいい奥さんになろう。私が彼を好きな気持ちは間違いないんだから。

 父から改めて大知さんの相手に私を、と言われ現実味が涌かないまま忙しい年末を避け、冷たい秋風が木々を揺らす頃に彼とお見合いする段取りが決まった。

 忙しい日々の中、貴重な休日を使って大知さんはこちらに赴いてくれた。

 お互いに知っている仲だが、こういった形式を大事にする両親のもと、このあたりではお馴染みの料亭で慣れない着物を身に纏い、スーツ姿の大知さんと向き合う。
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