お見合い仮面夫婦の初夜事情~エリート裁判官は新妻への一途な愛を貫きたい~
 でも、ひとりじゃなかったら……。もしも私がアルコールに強かったら、大知さんは姉としているみたいにお酒を楽しんだりしていたのかな?

 盛りつけた料理を運び、三人で夕飯を始める。

 ロールキャベツのトマト煮込みをメインに、サーモンとポテトのチーズ焼き、ブロッコリーのサラダとキノコのマリネといった献立だ。

 姉は終始私の料理を褒めて、料理を堪能してくれた。やはりおいしいと言いながら食べてくれるとうれしい。

「暗号資産に関しては、関連サービスがどんどん出てきて市場規模が大きくなっているから法改正をしても現状が追えないのよね」

「デジタル分野は、進捗が早くて前例がない場合が多いからな。法的評価が定まらない技術やサービスが増えて手を出す人間が多くなる一方で、司法判断に委ねられる事案も増えてくる」

 先日、最高裁で逆転無罪判決となった事案の話題から始まり、裁判官とパラリーガルのふたりの話はどうしても専門的な話題に移り変わっていた。

 当然、私がついていけるはずもなくご飯を黙々と食べる。

 こういうのには慣れている。彼が実家に来たときもそうだった。大知さんとしては久しぶりに業界の話ができて楽しいかもしれない。

 私が相手だと無理だから。

「もうこの話はいいだろ」

 ところがきりのいいところで大知さんは話を打ちきる。続けて両親の近況などを姉に尋ね、さりげなく私も話に入れるようにしてくれた。
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