お見合い仮面夫婦の初夜事情~エリート裁判官は新妻への一途な愛を貫きたい~
 姉はなにも気にするそぶりなく父と母、そして猫たちの様子も語っていく。

「ミルクとココアも千紗がいなくて寂しいみたいよ」

「本当? ベッドで寝るとき温もりがないからかな?」

「だから今はお母さんの部屋で寝てるわ」

 やはりミルクとココアにとって私は、寝るときの温もりと餌やり係程度の認識なのかもしれない。母のベッドで丸くなる二匹の写真を姉から見せてもらう。

 そこでほぼ食事が終わっていたのもあり、大知さんは空いた皿を持って立ち上がった。

「あ、私が」

 つられて即座に立ち上がろうとする私を大知さんは軽く制す。

「座っていろ。千紗だけ動く必要はないんだ。せっかく姉妹揃ったんだし、ゆっくりすればいい」

「……ありがとうございます」

 変に突っぱねず、おとなしく彼の申し出に従う。

「大知くん、優しいー」

 茶化す姉を無視して大知さんはシンクに食器を持っていく。多少は私も手伝いつつ大知さんはコーヒーの準備もしてくれた。

 姉は相変わらずワインをゆったりと楽しんでいた。大知さんもアルコールには強いらしく、まさに似た者同士だ。

 ほんのり顔を赤らめる姉は妙に艶っぽく、先ほどの同僚の人ではないが、他人からうらやましがられるほどの美人が目の前にいて、大知さんはなにを思っているんだろう。

 改めてふたりを視界に入れて小さく頭を振る。せめて明日からもう少し格好には気をつけよう。
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