お見合い仮面夫婦の初夜事情~エリート裁判官は新妻への一途な愛を貫きたい~
第五章 自白するので情状酌量してください
 翌日、まずは平日の服装をもっとおしゃれにしようと心がけ、休日ほどではないがメイクや髪型にも力を入れる。

 当然、お弁当や朝食作りもした上で大知さんの見送りに間に合うようバタバタと支度する。

 オフホワイトの薄手ニットに、ハイウエストのすみれ色のフレアスカートを組み合わせ、春らしさを意識したコーディネートを心がける。髪は軽くハーフアップにしてみた。

「大知さん!」

 結果的に家を出ようとする大知さんを逆に呼び止める形になる。

「いってらっしゃい」

 笑顔を向けたらどういうわけか大知さんがじっとこちらを見てきた。

「どうした?」

「え?」

 むしろ私が聞きたいくらいだ。しかし大知さんは訝しげに首をかしげる。

「なんだかいつもと雰囲気が違うから」

「これは……」

 まさかそこまでストレートに指摘されるとは思っておらず、予想以上にうろたえた。

「職場に行ったら着替えないとならないんだろ?」

 さらに真っ当な指摘をされ、ますます返答に困った。ここで堂々と『大知さんのためです』と言える度胸も言い出せそうな雰囲気もない。

「も、もう少し格好に気を配ろうと思って。保護者とか同僚の先生たちの目もありますし」

 苦しまぎれの無難な言い訳に、なぜか大知さんはわずかに眉をひそめた……気がする。

「あの、変ですか?」

 おずおずと尋ねると、言葉より先に頭に手のひらの温もりがあった。
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