お見合い仮面夫婦の初夜事情～エリート裁判官は新妻への一途な愛を貫きたい～

「若者ですから」

　すかさず川島先生が返す。そんな彼は、ストライプ柄のシャツにグレージュのカーディガンを羽織り、黒スキニーパンツを組み合わせている。

「私がいなかったら、川島先生と逢坂先生のデートになっていたわね」

　萩野先生にからかい交じりに伝えられ、とっさになんて返せばいいのかわからなかった。

「いえいえ。萩野先生もいらして、今日は両手に花で幸せです」

　川島先生がさらりと返事し、萩野先生と盛り上がる。こういう冗談にうまく返せない自分は、やはりユーモアセンスというものが足りない。

　もっといろいろなことをうまく立ち回れるようにならないと。

　講演会は私たちのような保育者のほかに、子育て中であろう母親らしき人も参加していて、なかなか濃い内容だった。

　質疑応答も多くの人が手をあげ、有意義な時間になる。久々にメモを取って、大学の頃の座学を思い出し懐かしい気持ちになった。

　講演後に講師の先生に挨拶をして、私たちは場所を移動する。

　夕飯には少し早い時間だが、歩いて向かっていたら意外といい頃になるかもしれない。歩くと少し距離があると聞いていたけれど、話していたらきっとあっという間だ。

「この年だからか、久しぶりに学習というものが楽しいと思えたわ」

「ヨーロッパの幼稚園での子どもたちの過ごし方は興味深かったですよね」

　内容を振り返り、萩野先生と盛り上がる。やっぱり来てよかった。子どもたちとの向き合い方に対する意識も変わった気がする。