【SR】幸せな結婚
「あら、言ってなかったかしら。
私もお友達と3泊4日で北海道に旅行に行くって。
ついでだから、空いた時間で文美にも会ってこようと思っているの」
出張の話を聞いた義母が、さも一度話したかのような口調で言った。
その後、ああ、そうだわと思い出したように携帯を取り出すと、久々に会うという自分の娘に、いささか興奮気味で何かの確認のため電話を掛けている。
「なんだ、新婚早々家のことを亜弥にまかせっきりかよ。
ったく、母さんはこれだからな」
英太の嫌味も、娘との会話に夢中の義母には全く耳に入らないようだ。
「こんばんはー。お荷物の集荷に伺いましたー」
若い茶髪の配送員が、玄関先で義母から段ボールを2箱受け取っている。
やる気のない少々乱暴な扱いに、義母は眉間に皺を寄せた。
「ちょっと!こっちはワレモノ入ってるんだから、気を付けてちょうだいよ」
旅行で使う荷物と共に、食料品や雑貨などをまとめて、義妹宛に送るらしい。
浮かれる義母を横目に、亜弥は静かに喜んでいた。
――2日の我慢。それならなんとか頑張れそうだ。