【SR】幸せな結婚

この、道行く人たちの中で、一体どれだけの人が満足ゆく結婚生活を送れているのだろう。

義母との相性の不安はあるものの、自分は最高に幸せな結婚ができたのではないか。

財布を握りしめながら歩くスーパーへの道すがら、改めて亜弥は思った。


ベビーカーに、ぐずったままの幼な子をそのままで、携帯で誰かと会話しながら歩く金髪の若い母親の姿。


『旦那がうるせーんだよ、無理無理。

子供の面倒見ねえ癖に口ばっかりでムカツクんだ』


愚痴をこぼす姿は、まだあどけない少女のような顔をしていた。


夕食時だというのに、寂れた病院跡地に車を止め、浴びるようにパック酒を飲む、くたびれた中年の男性。

目はうつろで、だらしない姿には威厳のかけらも感じられない。

年齢的に、おそらく管理職でもしているのだろうが、その顔に覇気は全く見あたらなかった。


おつとめ品の総菜を真剣な眼差しで品定めしている主婦のサンダルの先には、穴の空いた靴下から親指が顔を覗かせている。

酢豚のパックを二つ手に取り、一生懸命に肉の数を数えて比較していた。

買い物カートの中は、見事に赤い札の貼られた品物だけが入っていて、その徹底ぶりには思わず目を見張るばかりだ。


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