【SR】幸せな結婚
亜弥は複雑な気持ちになった。
あの人たちがかわいそうに見えてしまうのは、自分がこんなにも幸せだからかしら――。
だが、幸せの基準は人それぞれ違う。
もしかしたらああ見えて、実は皆、幸せなのかもしれない、とも思った。
例え、他人からはどう見えていても……。
自分だって同じだ。
早くに嫁ぎ、遊びも我慢しなければならず、おまけに夫の両親付き。
もっと独身を楽しめばいいのにと、哀れみの目で見られている可能性だってあるのだ。
でも、私は後悔など何一つない。
むしろ、待ちこがれていた日々なのだから――。
野菜コーナーの鏡に映る自分の顔と目が合う。
ゆるんでいる口元をきりっと結び、亜弥は小さく笑った。
今夜の夕食はブリ大根とほうれん草の白和えにした。
義父が帰ってきたらすぐに食べられるよう、ラップ材を掛けてセッティングを終える。
エプロンを外し、椅子に腰掛けた。
家族の帰宅を待つ一人の時間は久しぶりだ。
実家にいる頃はこれが当たり前だったのに、たった数日、誰かがいる生活を過ごした後だと、静けさがやけに寂しく感じた。