【SR】幸せな結婚
夕食を終え、亜弥はアールグレイを入れた。
上品なカップは、義母の趣味で揃えてあるリチャード・ジノリだ。
今までの生活では見たこともないその高級感に、扱いも自然と慎重になる。
湯を張って温めたカップを並べ、やや緊張気味でティーポットを傾けていると、義父がおもむろに口を開いた。
「ところで、亜弥さん。
前から一度聞こうと思っていたんだけど」
その言葉の先が、予想のつくような、つかないような質問だった。
テーブルにカップを置く手が僅かに震える。
少しずつ高鳴る心臓を落ち着かせるため、亜弥は大きくベルガモットの香りを吸い込んだ。