【SR】幸せな結婚
「よく私のことを覚えていたね。
記憶にあったなんて、何か思い出に残るようなことでもあったのかと思って」
いや、特に深い意味はないのだが、と笑いながら、義父は白髪一本ない頭をポンポンと叩いた。
「今までは、なかなかゆっくり話す時間もなかったものだからさ。
今日はせっかくうるさい母さんがいないんだ、たまには私が亜弥さんを借りてもいいだろう。
良かったら聞かせてくれないか」
口をつぐんだ亜弥の手のひらに汗が滲む。
乾いた喉を潤すため、アールグレイを一口流し込んだ。
緊張で口が開かない。
小さく呼吸を整え、震える身体を押えるように両手で包んだ。