【SR】幸せな結婚

英太から、自分の父親が高校教師だと聞いたのはまだ交際を始める前のことだ。

特徴のある苗字。

教師と聞いた時点で、もしかしたらと亜弥は思った。


「ひょっとして、W商業に居たこともある溝呂木(みぞろぎ)先生?」

「そうそう。ちなみに、名前は溝呂木寿生(ひさお)っていうんだ」

「そうだったの……私、知ってるわ。

一度も教科の担当になったことはなかったけどね」




交際するようになって、英太の家に初めて行った時、流れでこの話題になったが、やはり寿生は亜弥のことを全く知らなかった。


「へえ、それは偶然だなあ。

でもクラスが8組もあったし、教科担当でもしなけりゃ顔を覚えるのは無理だよ」


寿生の言葉にも、亜弥は特に残念だとは思わなかった。

面識がなかったのは承知だったし、生徒側だけが教師の方を覚えているというのは、良くある話だ。

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