【SR】幸せな結婚

亜弥が寿生の存在を知ったのは、1年の時の新入生歓迎球技大会だ。


亜弥は、バレーボールに出場することになっていた。

コートの隅に座って試合開始まで待っていた時、隣のコートでアタックしたボールが、運悪く亜弥の頭を直撃した。


衝撃が強く、地面に倒れ込んだ亜弥は、鼻から大量の出血にみまわれた。


悲鳴に近い叫び声を上げる女子生徒をかき分け、審判をしていた寿生が慌てて駆け寄った。


「大丈夫かっ!」


倒れた亜弥を抱きかかえるように支え、周りの生徒に指示を出す。

心配そうに見つめ、生徒が差し出したポケットティッシュで出血を処置しながら、気遣いの言葉を優しく掛ける寿生の横顔。

腕の中でぼんやりと見つめながら、亜弥は遠い記憶の父親に姿を重ねた。

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