【SR】幸せな結婚

英太と亜弥が交際を始めたのは、1年半前のことだった。


亜弥は高校を出てすぐに就職をした。

公立高校の授業料ですら、母に負担を掛けているのではと引け目に感じていて、卒業したら一刻も早く働きたいと思っていた。

就職先は通勤に1時間を要するが、とても待遇が良く、学歴よりも本人の能力ややる気を重視してくれる会社だ。




一方英太は、親の反対を押し切って、4年の時間を費やす学生生活よりも、いち早く社会人となることを選択した。


周囲からは、好奇の目で見られた。


「なにもそんなに急いで働かなくても、4年間ゆっくりやりたいことを見つければいいのに」

「生活に困っているような家庭でもないじゃないか」


そして、父親はそうでもなかったが、母親はその進路に猛反対だった。


「男の子なんだから、大卒くらい肩書きにつけておきなさいよ」


英太はそれがどうしても納得できなかった。

肩書きだけで、中身のない大卒だったら意味がない――。


そんな中で見つけたのが、就職先の現在の会社だった。

肩書きにこだわらない社風をいたく気に入り、入社したいと決意したのだった。

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