白練
第2章 回想-祓魔師
千百五十年前。
龍の国の古都である長安(ちょうあん)。

夕日の光が見渡すかぎりどこまでも続く雲の中から現れ、赤かった、赤かった。赤の周りのオレンジ色が西の空を染めた。突然、空を破るかのような音がして、その後、妖狐たちが防御壁を再び攻撃した。

「私の為に死になさい、第一防御壁を完全突破するまでもちな」と人間の姿にしっぽを生えてた妖狐(ようこ)の王は言った。人間の姿の妖狐の王は圧倒的な比類のない誇り高きオーラを醸し出していた。野心満々な目、巧みな鼻、柔らかそうな赤い唇、艶やかな容姿は獲物を優しく包み込むようだ。

誰でも優しさがあるが妖狐の王にも優しさがある、ただこの「優しさ」は妖狐の王の体で艶やかな容姿よりもっと明るく見えてくる。その軽薄な「優しさ」を目にした「人」は、妖狐の王の「優しさ」に犯されながら躊躇なく溺れるだろう。欲しいと思う心を一層ずつ剥がされ続けるようだ。

剥がされるうちに高揚感を覚えていく。一度、気付いてしまったものは燻るように心身の奥を焦がしていき、優しさに溺れていくリスクを背負うことで徐々に快感へ変わりつつ、心身の奥に一気に「優しさ」が突入され、最終的に優しさに溺れた「人」の魂は妖狐の王の「優しさ」に閉じ込められていくのだ。妖狐の王は溺れる人を見ても乱されることなく、妖狐たちを率いて、復讐の為に長安を占領しようと企んでいた。祓魔師(エクソシスト)たちは必死に都を守っていた。

「首領、報告です。第三防御壁が突破されました」と一級祓魔師であるシリウスは言った。

「報告です。第二防御壁が突破されました」と二級祓魔師であるオリオンは言った。

「修復可能なのか?」祓魔の首領(ドンエクソシスト)は言った。

「不可能だ。三級祓魔師まで能力を出し切りそうだ、四と五級を派遣しよう」とオリオンは言った。

「四と五級を派遣したら、俺らは妖狐の王と同じことをやっているもんだ、俺が行く。ここはお前に任せる」と首領は言った。

シリウスは裏能力を発動して、首領の代わりに祓魔した、一部の狐に祓魔を終えた途端にシリウスは首領に声をかけた。

「首領、まさかアレを使うのか?」とシリウスは言った。

「そうだ」と首領は言った。

「メンタル崩壊に気をつけろ」とシリウスは言った。

首領は第三防御壁の突破口までまだ着かない所に神の領域の術を発動した。神の領域の術は術を発動した人と神の気持ちを共感させ、神の力を借りること。借りた神の力を収まる器でなければメンタル崩壊になる。逆に神の力を収まるのであれば、巨大防御壁を作ることができる。

しかし、敵が神の領域の術によって作られた巨大防御壁を突破しようとしたら、祓魔師は苦痛を受けざるおえない。神と気持ちの共感になっているので神も同じく苦痛を受ける事になる。巨大防御壁と外の世界の合間にある結界は質が良ければ敵からの攻撃を受けてもその攻撃は敵に跳ね返るのだ。首領は神の領域の術の中級を習得したが結界の質は不安定だった。

「どんな防御壁だろうが、私に無駄なもの、祓魔師たちはここでくたばりなさい」と妖狐の王は言った。

妖狐の王は分身を使い、首領が神の領域の術によって作られた巨大防御壁を攻撃に向かった。分身たちは獣の声を発しながら巨大防御壁に襲い掛かった。首領は結界の質が不安定と知っている為、心の準備をした。

「死んでたまるか」と首領は言った。

巨大防御壁の内側にいる一級、二級と三級祓魔師たちは全員が裏能力を発動した。裏能力は巨大防御壁を透過し、思わぬスピードで妖狐の王の身に打撃した。撃たれた妖狐の王は口から血を吐き出し、血が口元に沿って垂れていく。同時に妖狐の王の分身は倒れた、首領によって造られた結界は意外と安定した為、分身からの攻撃を跳ね返ったのだ。分身は跳ね返された攻撃を受けた時に次々と消えた、妖狐の王は倒れた。

「皇帝への証拠とする為に尻尾を切って持ち帰ろう」とシリウスは言った。

「怨念が強過ぎるんだ、尻尾を切ったら封印だな」と首領は言った。首領は水晶の封印玉を取り出し、封印の術によって妖狐の王は封印玉に収まれ、更に封印札を貼った。突然、一匹の両性具有の金狐が首領の視界に入った、金狐は善良な狐である。長安を占領の陰謀に巻き込まれたが戦から生き残った。

「俺は悪事を果たす妖怪は嫌いだ、お前は違う、二度と変な戦に巻き込まれるなよ、どこかで仏でも、仙人でもなれよ」と首領は金狐に言った。

金狐は媚びる言葉が口に出来ず、礼儀を正しく頷いて言った、「ありがとう」。金狐は前向きに走り出した。首領は金狐の姿が消えるまで見届けた。長安にいた皇帝の妻の妹に化けていた妖狐の王は封印された。
一件落着という機に祓魔師は皇宮と深い縁を結んだ。

長安の為に祓魔の必要性を感じた皇帝は祓魔機関(エクソシストインスティチューショ)が成立するのを同意した。祓魔機関が成立後に祓魔師は人々に害をもたらす妖怪を一網打尽した。妖狐の王を封印の件のあれから三年後の今も案件は次々と来る、祓魔機関は暇な時間が無さそうだ。

「緊急会議だ」と首領は言いながら室内を見渡した。首領は魔王に関する資料を部下に配布しながら状況を話している、「ヨーロッパの魔王、無職、男性。各教会、祓魔の現場、家やその周辺など地域広く現れる。最近は教会の神父に追い出される記録がないがヨーロッパの黄泉の国境を越えて、長安の黄泉の国で犯行を果たそうとしている、我々は神父に増援を要請された」と首領は言った。

なんでも主導権を握りたくなるシリウスは緊急資料を見ながら言った、「魔王を退治する為に神父と組むのは良いが、どうせ退治権を握っているのは神父だろ、なんでも主導権を握りたがる」言葉を切ると同時に資料をデスクに置いた。

いや、主導権を握りたがるのはシリウスお前だろ、と全員の心の声が一致である。実は、二年前に祓魔機関が追うターゲットは常世の国に不法入国した事によって、シリウスはターゲットを優先に追う為に仕方なく深夜帯で働く代理首領に常世の国の緊急入国証と紹介文書のお願いした。常世の国に向う為に徹夜だったシリウスは常世の国に到着したのが午前四時であった。そこで同じターゲットを追っている神父とシリウスは初対面した。

神父はその時に極秘任務だった為、ターゲットの退治権をどうしてもシリウスに渡せないのだ。神父の極秘任務を知らないシリウスは嫌々ながら神父に説得されて、退治補佐役を受けた。朝になると、深夜帯で働く代理首領は首領に状況を引き継ぐ時に書類発行の件も首領に引き継いた。シリウスはターゲットを追った後に祓魔機関に戻り、首領はシリウスの報告無しと計画無しのターゲット追いについて激怒した。色々あったが最終的に残念ながらシリウスは永遠に神父の優しさと頭の良さは知らないだろう。

そして、今。

「シリウス、会議中だ、個人の気持ちを持ち込むな」と首領は言った。

シリウスは黙った。

「首領、書類の準備はどうしますか?」とオリオンは言った。

「事前の書類は何もない、事後の報告書のみだ、後で全員は神父の指示を受けるんだ」と首領は言った。

一方、祓魔機関は隠蔽性を保証する為に出入り口がないのだ。指定された壁に移動の術を発揮できれば出入りできるが、神父はヨーロッパ人なのでヨーロッパの術は長安の祓魔機関に効かないのだ。祓魔師組織としてうまく連携できるように神父は長安の術を学んだがまだ慣れていないので、神父は首領が緊急会議中に長安の移動の術によって天井から降ってきた。

ドーーーン
大きな音がした。

この時、緊急会議中の会議室の空気はたったの二秒で止まった。床に居る神父は人生で経験した最も長い二秒であった。

「隠蔽性がありますね、この入り口は」と神父が言いながら床から立ち上がった。

「ありがとう」と首領は言った。

首領は傍らにいる神父を前に立たせ、首領は片方に退いた。神父は緊急会議を引き継ぎ、魔王の似顔絵を壁に貼った。魔王の似顔絵を指し、「私がここに来た最優先のターゲットはこれだ」と神父は言った。

一方、妖狐の王が再び世に出るのを予測した金狐は何年間もかけて妖狐の王を倒す為に勢力を育ち金狐一族になりはった。金狐一族は不死身であり、子孫代々は強くなる。更に祓魔師への恩返しとして金狐一族は祓魔師と契約し、一級祓魔師しか召喚できない霊獣になった。祓魔師と契約した金狐一族はその目つき中に少しの誇りな光があった。

光はあっという間に過ぎ去った。
金狐一族に一匹の狐の額に日のシンボルが無かった。その狐は相方の祓魔師を愛していた。その狐は相方との間に子が出来た。平穏な日々であったが平穏と言う言葉から離れた封印堂(ふいんどう)には妖狐の王は復讐が失敗して、更に封印玉中に閉じ込められ、日に日に憎しみが深くなった。

時が悠々と流れた。

封印玉の全体が黒いオーラが発していた。すると、月の光も無い夜に封印堂に置かれている妖狐の王の封印玉が自然に割れた。封印堂の前にいた見張り番は異変に気付き、二人はすぐさまに戦闘体制に入り、一人が首領に報告に行った。同時に祓魔師専属の助産師たちは出産器具や提灯を持ってある部屋に直行した。

見張り番によって報告を受けた首領は封印堂の前で罠を設置した。のちに祓魔師たちは封印堂まで駆けつけた。封印堂から離れた山で修行中の両性具有の金狐は何かの気配を感じ、しかめっ面をした。猛烈な気配によって金狐の修行を中断せざるを得なかった。

「私だけじゃない、他の方の修行も強引に中断させる程の気配はやっぱり強い威力である」と金狐は言う。金狐一族はすぐにでも妖狐の王が世に出るのを阻止したいが祓魔師と契約があり、祓魔師に召喚されるまで金狐は必ず待機であった。妖狐の王は強引に封印堂の罠を突破した。

「私はやっと生き返った、祓魔師は私を閉じ込めたのにあれから進歩がないなあ、所詮人間はこの程度だ。こんな罠で私が引っかかるとでも思っているのか」と妖狐の王は言う。

妖狐の王が完全に世に出たと同時に部屋に居た祓魔師は子どもが産まれた。その子は生まれつき不死身の能力と祓魔師の能力を持っている、外見は普通の子と変わらないが助産師は尻を叩いてもなかなか泣かないだった。部屋の外に居た妖狐の王は見知らなぬ気配に気づいた。不死身の能力を欲しがる妖狐の王は生まれて間もない祓魔師の赤ちゃんを一瞬で奪った。

「封印玉の中で罰を受けた私はもう自由の身、私は無数の命を持ち、生まれ変わってから更に強くなっていたが死んで生まれ変わる度に死ぬの痛さが毎回より強烈になる、この子の能力があれば完璧」と妖狐の王は片手で赤ちゃんを抱き、もう片手は撫でながら言う。

祓魔師たちは赤ちゃんを助けてたい気持ちで前進したが、妖狐の王は赤ちゃんを人質にした。赤ちゃんを撫でた手は毒針を持ち、毒針の先端を赤ちゃんに向きながら妖狐の王は言った、「人間どもは来るな、来るとこの子の喉を貫くよ」

祓魔師たちは赤ちゃんの為に足を止めた、首領は冷静に考えた、月の光もない今に戦うのは勝ち目がないのだ。その後、祓魔師たちは何度も赤ちゃんを助けに行ったが結果は部下を損失するか、引き返すばっかりだった。なぜなら、長安占領の陰謀が潰された以降に妖狐の王はアジトを作らないのだ。

持ったとしても祓魔師を立ち入り禁止の結界を張っているのだ。妖狐の王は気配を隠すのがますます上手くなっていく。妖狐の王は赤ちゃんにも気配を隠す為の術を下した、祓魔師たちは妖狐の王と赤ちゃんを探すのはより一層困難になった。

長い年月を経て、妖狐の王は歪んだ価値観とともに気持ちも変化した。欲しいものを守り切りたいのか、欲しいものを得られない悔しいなのか、それとも母親の気持ちが触発されたのか、その為に持っている能力と強さを捨てても良いと決心した妖狐の王は錠剤を調合した。錠剤は未完成の物である。

妖狐の王によって育てられた赤ちゃんは二十歳の少女に成長した。少女は錠剤を誤飲し再び赤ちゃんに戻った。今、その子は十五歳に成長したが錠剤によって記憶喪失になり、体も十五歳で成長が止まり、不死身の能力も失った、祓魔師の能力も錠剤のせいで封印された。

永遠に「普通」の少女のままである。少女は妖狐の王に対して娘としての信頼があった。極めての信頼と依存は少女が感情に溺れ、妖狐の王を抱きしめた。二人の身長差により少女は顔を埋め、妖狐の王は手で少女の頭を撫でながら頭を上げ、脳内は事を考えながら前方を見た。互いの表情が見えないのだ。

「この世界はもともと私のもので、私と対立するすべての人は死ぬべき!」

「私は破壊しているのではなく、創造している!胸の中の完璧な世界を創造している!」

「貴女の存在は私にとって苦痛です。なぜなら、貴女はいつまで経っても他人の「子ども」である、私は得られない、しかしとても愛している、貴女の能力も得られない、どうしたらいいか」

妖狐の王は胸でそう思い、悔しそうな表情をした。ただ、対立している人も、少女も生きさせたくない一心で早めに殺めなかったことにより悔しいのだ。少女を殺めるのに対して復讐と関係なく、少女を自分のものに変えたいだけ。妖狐の王は少女に対する感情に迷いがある。妖狐の王は初めて人間になった為、人間の感情を理解するのは難しいのだ。

ただ「母親」でありながら「恋人」でもある関係が他人に知られてると想像もできない程の恐怖が妖狐の王は感じた。もし、少女が感情に欺瞞と祓魔師への復讐の喜びが混じっていることを知ったら、どれほど絶望だろうか?きっと離れるでしょう?妖狐の王の残酷さと偏執はもう自分の結末を隠すことができないので、妖狐の王は少女が死ななければならないと思った。

みんなが死ぬ前に少女が先に死んで欲しいと妖狐の王は思っていたのだ。少女が真実を知る前に愛に満ちた幻境に浸り自分の手で死なせるのは少女が失望させ、絶望させるよりもよっぽど良いと妖狐の王は思っている。ここまで思うと妖狐の王の口元にはっきりしない笑みが浮かび上がった。

しかし、少女は妖狐の王が自分を殺す計画を知っていた。少女は喜んで妖狐の王を信頼し続けた。これで魂も愛する人のものになれるからだ。きっと自分は妖狐の王の手で死ぬことができると信じていた。実際、少女の依存と信頼は「娘」としてのなのだ。少女は妖狐の王の目には「優しさ」が満ちているのを見た。

妖狐の王は短剣を抜き、刃を少女の首に刺して切り裂き、濃厚な血は妖狐の王の白い頬に噴き出した。首の痛さが少女の視線を驚き怯えるに変わらせた。少女は赤に染められ、美しい野薔薇のように最も暗く静かな土地に咲き乱れる。少女の口元が少し幸せそうに微笑んでいた。目が開けたまま力が尽くし人生の最後の瞬間は妖狐の王の姿を見たかった。

やっと目に入った......
妖狐の王はさらに華やかに笑った。

埋葬されたのは他のものではなく少女の時間なのだ。少女は命を失ったのではなく、時間から抜け出したのだ。妖狐の王はそっと少女の頭を持ち上げ、少女と見つめ合った。少女の唇にキスをした。このキスはこれまで以上に強く、ただ少女はもう感じることはない。少女の魂の記憶はきっと長安から旅立った後に始まるだろう、少女の名は「エマ・ゴロータ」。

エマは婆さんの口から出た名前を聞いた時、強いショックを受けて取り乱した心が落ち着かないのだ。真実はエマの想像を超えている。婆さんはエマの驚いた目つきと表情を見て言おうとした言葉を呑み込んだ。真実はさきの回想だけじゃないのだ。

この時のエマはきっとほかの真実を受け入れられないだろう、婆さんはしばらく言わないことにした。婆さんはテーブルの上のエマが淹れたお茶を持って一口飲み、エマの不安な心が落ち着くまで婆さんは付き添っていた。エマの心が落ち着いたらもう夕暮れで、テーブルの上のお茶とっくに冷めた。

「婆さんが言った少女が私と同じ名前に過ぎないことを私は願っている」とエマは言う。エマは考えを整理した。

「私もそう願いたい」と婆さんを言う。

「婆さん、なぜ、私に真実を言ったのですか?私の為にも真実を隠したほうがいいじゃないですか?」とエマは言う。

「それはエマが真実を知らなければならない」と婆さんは言う。

「なぜ、なぜ私が知らなければならないのか、まさか婆さんはわざと私に真実を知らせているのですか?」とエマは言う。

「そう、私は長い間に真実を守っていたのは、エマを待つためである、なぜなら、あることはエマしかできない」と婆さんは言う。

「それは何ですか?」とエマは言う。

「これからのことはエマに負担がある、身体的にも、心理的にも負担がある、エマはよく知りたいかどうかをはっきり考えなければならない」と婆さんは言う。

「もう、ここまでもきただから私ははっきり考えた、私は知りたい!」とエマは言う。

「分かった。それはエマの名前はエマ・ゴロータとは呼ばない、あなたの本当の名前はローズ・アウロラ・デ・アレグザンドラ・ディビスである、龍の国の長安で出身の貴女は祓魔師とナサーズ帝国の貴族の血統を持っている、貴女の本名の意味は愛された人間の守護者、曙の女神である」と婆さんは言う。

「自分の身元を知ったが、今はもっと知りたいのは婆さんは誰ですか?」とローズはが言う。

「私は貴女の魂です。人間でも、祓魔師でも、なんでも、一つのものに一つの魂がある、しかし、貴女が生まれた時二つの魂がある」と婆さんは言う。

ローズは黙っている。

「妖狐の王によって記憶が無くしたのは成長が止まった一つ目の十五歳の魂である、「貴女」にとって全部の記憶が無くしたわけではない、二つめの魂である私が全て覚えている」と婆さんは言う。

「そうなんだ、でも、私は色々よく分からないんだ。私はいつからかな、何人目なのかな、ただ転々と肉体を乗り換えていたのは覚えている」とローズは言う。

「そうね、私もこれで何人目かな?これからローズが完全体になって欲しい、名の通りに愛された人間の守護者、曙の女神になれるようにローズは生まれた時から付けていた真珠のペンダントが必要である、そのペンダントはローズの全てが記録されている、その記録は私の記憶よりも詳しい」と婆さんは言う。

「じゃ、真珠のペンダントはどこにあるの?」とローズは言う。

「手紙を見よう」と婆さんは言う。婆さんはテーブルに置かれてあったK夫婦宛の手紙を開いた。

「この手紙は!」とローズは言う。

「これは八年前の王位継承の戦の最中に私はまだこの体に乗り換えしていない時の話、貴女のペンダントは私が保管していた、しかし、重病化の肉体だったので魂は物を持ち上げようとしても出来ないので、保管できる状況ではなかった、今チャイナタウンで骨董品店を経営するリーの手元にある」と婆さんは言う。

ローズは手紙を再び見た。

「なんで署名は婆さんの名前じゃなく、私の名前でもない、エマ・ゴロータを署名にしたですか?」とローズは言う。

「身分の安全の為です」と婆さんは言う。

「そうなのね」とローズは言う。

「ローズ!これからはどうするつもりですか?」と婆さんは言う。

「一番のことはペンダントを取り戻すこと、明日の朝にチャイナタウンへの列車に乗る」とローズは言う。

これで見た目はただの婆さんと十五歳の少女、実際は婆さんの魂と十五歳の少女の魂は一人のものである二人はチャイナタウンに向かうのだ。
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