総長は、甘くて危険な吸血鬼

嘘と、裏切り




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【天音side】



深夜、町外れの河川敷で

二つの集団が乱闘を繰り広げていた。


「チッ、何で俺がこんな事…」


向かってくる相手を軽々と薙ぎ倒しながら俺は呟いた

後方を油断した隙に蹴りを入れられ、地面に転んだ時についた砂埃を手で払う


「オラァ!ここは俺らの縄張りなんだよ!」


こいつ、バカだなー
喧嘩売る相手ぐらい選べばいいのに

そんなことを考えながら、軽い回し蹴りでそのまま奥にいた何人かもまとめて吹き飛ばす


「あーダル。雑魚しかいねーじゃん」


敵集団の長の前に立ちはだかり、徐々に距離をつめる


「お、おい、こんな強い奴いるとか聞いてねぇよ…!」


俺だってやりたくてやってる訳じゃねーんだよ


「なぁ。お前らこそさぁ、この前ウチの縄張りで騒いでたらしーじゃん?潰されてぇの?」


ドスの聞いた低い声と、月に照らされて鋭く光った水色の瞳で脅しかける

あぁ、早く帰りたい。さっさと消えてくんないかな


「…は…お前、栗栖天音…!?」

「あ?……あれ、マスクっ…」

「な、何でここに…?お前、White Lillyの…」


辺りを見渡すと、すぐそばにさっきまでつけていたはずのマスクが落ちていた

まずい、完全に油断してた。

明るい時間帯はウィッグつけたりフード被って変装してるけど夜中だしいいやと思って…


「おい」

「は、はい…」

「今回は特別に見逃してやる。その代わり、ここで俺と会ったことを誰にも口外するな。もし口外したら…ね?」


相手の首根っこを掴み、睨みつけながら言った

一応俺は喧嘩は強い。
叶兎ほどじゃないけど、1人で何十人か相手できると思う。

怖気付いた相手集団は、「すいませんでした!!!」と言いながら走ってどこかへ去って行った。


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