私を、甘えさせてください
部屋に入ると、空川さんはソファにドサッと寄り掛かった。
だいぶ、酔ってるみたいだ。


「空川さん、お水持ってきますね」

「うん・・」


ジャケットを脱ぎ、ネクタイをグッと緩める。
当たり前の仕草だけれど、やっぱりドキッとした。


このままここにいたら、雰囲気に支配されてしまいそうだ。


「あの・・私、帰りますね」


そう言ってバッグに伸ばした手を、ふいにつかまれる。


「・・・・帰らないで」


その言葉と私を見上げる視線に、どう反応していいか戸惑う。


「俺、カッコつけたくて余裕ぶってたけど、もう限界」

「え?」

「はー、カッコわる」


ククッ、と俯いて笑っている。


「クルマで寝顔見た時、もうヤバかったんだ。他の誰にも見せなくないって、強く思って。

でも、それをどう伝えればいいのか分からなくて飲み過ぎた・・・・カッコ悪いよね」

「空川さん・・・・」


こんなにストレートに表現されたら、勘違いするはずもない。

このまま朝まで・・・・私と一緒にいたいということだよね。


「顔、上げてください。カッコ悪くなんかないから」


ゆっくりと顔を上げた空川さんの唇に、私は、自分の唇を触れさせた。

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