私を、甘えさせてください
何度か求め合った後に迎えた朝は、私が先に目覚めた。


すぐ目の前に、空川さんの寝顔がある。

ほんの少しだけクセのある黒髪に指を通すと、起こしてしまったのか、身体が動いた。


「ごめんなさい。起こしちゃった」

「・・・・うん、いいよ」


寝起きながら、何か言いたそうに私を見つめている。


「・・・・なんかさ」


髪の毛をすいていた私の手に、空川さんは自分の手を重ねる。


「目が覚めた時、一緒にいたいと思った人がいるのって、こんなにいいものだったんだ」

「そんなこと言って・・・・誰かと目覚めるのは初めてじゃないでしょ?」

「まぁ、それはね。でも、俺が言ったことちゃんと聞いてた? 『一緒にいたいと思った人が』ってとこ」

「うん、聞いてた」

「つまり、そういうことだよ」


ふわりと私を抱きしめて、まだ眠そうに瞬きしている。


「美月は・・・・目が覚めた時に俺がいて、後悔しなかった?」

「後悔? どうして?」

「俺と一緒で、良かったのかな・・って」


答えに困った。

後悔はしていない。
だけど、俺と一緒で良かったのか・・という問いかけには、どう答えればいいんだろう。


考えを巡らせて、私は答えた。


「少し、後悔した」

「・・・・そうか」

「朝まで一緒にいてもいい?・・って言ったことを」

「・・うん」

「私も・・・・」

「え? 私も?」

「私も、日曜の夜まで一緒に・・って言えばよかったなって」

「それは、後悔・・なのか?」

「ん? 違った?」

「どうかな・・でも、そういう後悔なら大歓迎」


そう言うと、私を抱き締める腕に力を込めて額にキスした。

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