私を、甘えさせてください
ホテルをチェックアウトし、一旦家に送ってもらうことにした。


「美月、家どこだ?」


最寄駅と住所を伝えると、空川さんは近いな・・とつぶやきながら、カーナビを操作している。


「どこと近いの?」

「俺の家」

「えっ、どこ?」

「うちは、ここ」


指差した場所を見ると、駅前にできた新しいマンションだった。


「ええっ、買ったの?」

「うん」

「間取りは?」

「2LDKだけど、どうして?」

「・・・・私も、そこ検討してたから」

「は?」

「だって、もう一生ひとりかもしれないなって・・。
だったらマンション買おうかと思ったんだけど、迷ってるうちに完売したのよ」

「・・・・見に来るか?」

「行く!」

「アハハ。じゃ、先に美月の家に向かう」


クルマを走らせながら、『ひとつ聞いてもいいか?』と私に尋ねた。


「美月が今まで、誰のものにもならなかったのはどうして?」

「・・・・それ、聞いちゃう?」

「話すの嫌か?」

「・・・・だって、つまらない話だよ」

「そうだとしても、いまの俺にとっては大事なことだから聞きたいんだ」


興味本位で聞いているわけではなさそうだけれど、空川さんにとっては、呆れるような話だ。


「やっぱり・・話したくない」


私は、窓の外に視線を向けた。

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