私を、甘えさせてください
「このまま俺の家に向かってもいいかな? 触れたくて我慢できなくなった」


気が付けば、空川さんのマンションまでクルマで5分くらいのところにいた。


無言でクルマを走らせてマンションの地下駐車場に入り、抱きかかえるように私を助手席から降ろす。

そしてそのまま私の手首をつかみ、せわしなく自宅へ向かった。


玄関のドアを開け、ふたりがドアの内側に入ると同時に『こっち来て・・』と、他の部屋を見る間もなく寝室に連れて行かれる。


「俺、ずっと恋愛に冷めてるんだと思ってた。触れたくて我慢できないとか、初めてだ」


私を見下ろす瞳が少し揺れている。


「俺、美月にとって特別な男になりたい」

「特別?」

「美月が甘えられる、唯一の男でいたいんだ」


空川さんの視線が『俺を受け入れて』と私に訴えかける。

昨晩もそうだったけれど、衝動的に私を押し倒すようなことはしない。

ギリギリのところで、私に選択の余地があった。


きっと昨夜も、帰ると言ったら帰してくれたのだろうし、今も『ごめんなさい』と言えば『分かった』と口にするはずだ。

大人、だから。


でも、もうお互いに止めようがなかった。

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