私を、甘えさせてください
「永田さん」
面談が終わって階下のフロアに降りる手前で、空川さんに呼ばれる。
ビジネス仕様のやわらかい物言いで、相澤さんに話しかけていた。
「相澤さん、永田さんを少しお借りしてもいいですか?」
「もちろんです。私、先に戻りますね」
階段を降りていった相澤さんの姿が見えなくなると、空川さんは少しだけ不機嫌そうな表情に変わった。
「本部長、何かあったんですか?」
「・・・・あいつ、ただの同期か?」
「え?」
「『美月』って呼んだ声に、男の感情が入ってた」
男の感情・・って。
隠すほどのことでもないし、私はあっさり白状した。
「井川・・ですよね? 昔、少し付き合ってました。もう15年も前ですけど」
「・・・・そう。昔の男か」
空川さんは、私に顔を寄せてささやく。
「あいつに、美月は渡さないよ」
「えっ?」
渡さない?
どういうことか尋ねようとした私に、『じゃあ』と手を振って空川さんは階段を降りて行った。
意味の無いことを言うような人じゃないし・・。
井川に、何か感じたんだろうか。
来週予定されている出張が、急に気の重いものになる。
元々は井川の前任者と行くはずのものだったから、久々の関西に、夜は向こうで美味しいものでも食べようと話していた。
面談が終わって階下のフロアに降りる手前で、空川さんに呼ばれる。
ビジネス仕様のやわらかい物言いで、相澤さんに話しかけていた。
「相澤さん、永田さんを少しお借りしてもいいですか?」
「もちろんです。私、先に戻りますね」
階段を降りていった相澤さんの姿が見えなくなると、空川さんは少しだけ不機嫌そうな表情に変わった。
「本部長、何かあったんですか?」
「・・・・あいつ、ただの同期か?」
「え?」
「『美月』って呼んだ声に、男の感情が入ってた」
男の感情・・って。
隠すほどのことでもないし、私はあっさり白状した。
「井川・・ですよね? 昔、少し付き合ってました。もう15年も前ですけど」
「・・・・そう。昔の男か」
空川さんは、私に顔を寄せてささやく。
「あいつに、美月は渡さないよ」
「えっ?」
渡さない?
どういうことか尋ねようとした私に、『じゃあ』と手を振って空川さんは階段を降りて行った。
意味の無いことを言うような人じゃないし・・。
井川に、何か感じたんだろうか。
来週予定されている出張が、急に気の重いものになる。
元々は井川の前任者と行くはずのものだったから、久々の関西に、夜は向こうで美味しいものでも食べようと話していた。