私を、甘えさせてください
呆然としている私に、『考えといて』と肩を軽くポンと叩いて、井川は会議室を出て行った。


「課長、何か1課から指摘ですか?」


来週のイベント担当が心配そうに会議室にやって来る。


「大丈夫。別件だったから心配しないで。スライドはもう完成した?」

「はい。課題の修正終わったので、後で見てください」

「もちろん」

「あの・・・・実はバタバタしている間に、指定された時間の新幹線に空きが無くなってしまって。
もし、課長の時間に余裕があったら、予約のチケット譲ってもらえませんか?」

「いいですよ。後で座席番号送るね」


助かった・・。

井川がどの席を取ったかは知らないけれど、一緒に行くのは避けられそうだ。


それにしても『俺と付き合わないか?』って、どういうつもりなんだろうか。


井川は私と別れた後、『俺が必要だ・・って甘えてくれる彼女』としばらく付き合っていたと聞いた。

結婚したのかと思っていた。

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