私を、甘えさせてください
「知っててくれたんですね。来週からよろしく」
来週着任予定の人事本部長だと、名前だけは常務に聞いていた。
でも、まさかこんなところで会うなんて・・・・。
「はい、折りたたみ傘。それとも、こっちの長い傘に一緒に入りますか?」
「いえ、それは・・。折りたたみ傘、お借りします」
私は折りたたみ傘を受け取りつつ、もう一度、未来の上司と目を合わせた。
「本部長にしちゃ随分と若いな・・って、永田さんの顔に書いてある」
「そ、そんなこと・・・・」
「同い歳らしいから、仲良くやろうよ。じゃ、また来週」
そう言うと、先に店を出て駅に向かって歩いて行った。
私も店を出て、借りた傘を差しながら離れていく後ろ姿を眺める。
まさか、同じ年齢だとは思わなかった。
他部門の本部長は、そのほとんどがアラフィフだったから。
空川 拓真(たくま)。
光沢のある生地で仕立てられた、高級感のあるスーツ。
主張はしないけれど、見間違えようのないハイブランドのビジネスバッグと靴。
その出立ちに違わぬ、高い役職。
顔は濃過ぎない涼やかな印象で、声はあまり高くなく耳に残る音で・・。
どうしてだろう。
一瞬で思い出せる自分に驚く。
まさか、一目惚れでもしたの・・・・?
ふふっ、と他人事のように小さく笑う。
でもどうせ、既婚者か彼女持ち。
いつも通りアタマを整理をして、借りた傘とともにオフィスに戻った。
来週着任予定の人事本部長だと、名前だけは常務に聞いていた。
でも、まさかこんなところで会うなんて・・・・。
「はい、折りたたみ傘。それとも、こっちの長い傘に一緒に入りますか?」
「いえ、それは・・。折りたたみ傘、お借りします」
私は折りたたみ傘を受け取りつつ、もう一度、未来の上司と目を合わせた。
「本部長にしちゃ随分と若いな・・って、永田さんの顔に書いてある」
「そ、そんなこと・・・・」
「同い歳らしいから、仲良くやろうよ。じゃ、また来週」
そう言うと、先に店を出て駅に向かって歩いて行った。
私も店を出て、借りた傘を差しながら離れていく後ろ姿を眺める。
まさか、同じ年齢だとは思わなかった。
他部門の本部長は、そのほとんどがアラフィフだったから。
空川 拓真(たくま)。
光沢のある生地で仕立てられた、高級感のあるスーツ。
主張はしないけれど、見間違えようのないハイブランドのビジネスバッグと靴。
その出立ちに違わぬ、高い役職。
顔は濃過ぎない涼やかな印象で、声はあまり高くなく耳に残る音で・・。
どうしてだろう。
一瞬で思い出せる自分に驚く。
まさか、一目惚れでもしたの・・・・?
ふふっ、と他人事のように小さく笑う。
でもどうせ、既婚者か彼女持ち。
いつも通りアタマを整理をして、借りた傘とともにオフィスに戻った。