私を、甘えさせてください
「拓真」

「ん?」

「やっぱり、私があの時に見たり聞いたりしたのは、拓真じゃなかったんだね」

「あ・・」


見えない事実に苦しんで、泣き明かしたのが嘘のようだ。

焦らなければ、この先もきっと真実が見えてくる。


「ね、早く帰ろう。今夜は、一緒にご飯作らない?」

「美月・・本当に迷惑じゃないの?」

「ん? 何が?」

「俺と一緒にいると、さっきみたいに関係ないことに巻き込んで、美月が嫌な思いを・・・・」


だから、だったんだ。

彼と井川が言い争いになった日を境に、連絡が無くなったのは。

私を、思ってのことだった。


でも実際は、噂話や勘違いで私が混乱するばかりで、もし今日、一緒に過ごせなかったら・・・・。


彼は私と更に距離を置き、理解できない私は、井川を受け入れることも考えたと思う。


「私こそ、迷惑じゃなかったら一緒にいたい。もう、すれ違いたくないから」


彼はフッと笑って言った。


「俺たち、相変わらずだな。もう一緒にいなきゃダメってルールにするか」

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