私を、甘えさせてください
ふぅ、と小さく息を吐く。

残された名刺には、空川 和真(かずま)と書いてあった。

お兄さん・・か。


『仲悪いっていうか、俺、兄貴に相当嫌われててさ』

嫌われているということは、彼もお兄さんを良く思っていない・・ということになるだろう。


今日ここで会ったことを、彼に話すべきか・・。


少し、迷った。

会ったことは、別に隠すようなことでもない。

まだ、実際に食事に誘われたわけでもないし、会った事実以外は、話すのをやめておこうと思った。



「ただいま」

「あ、おかえり」


一瞬、戸惑ってしまった。
いつもなら、すぐに彼に触れてキスするのに。


「ん? 美月、何かあった?」


心配するような、穏やかな視線。


「あ、うん・・・・聞いてくれる?」


もちろん、と言って彼は私の頭をポンポンとなでた。

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